読者と主人公と二人のこれから
著者:岬鷺宮 イラスト:Hiten
今回は小説を題材にしたボーイミーツガールもの、「読者(ぼく)と主人公(かのじょ)と二人のこれから」をご紹介します。
この物語さえあれば、他に何もいらない。この小説『十四歳』と、その中に確かに息づく主人公、トキコがいれば―― だが、彼女は俺の前に現れた。灰色の毎日の始まりになるはずだった、新学年のホームルーム。黒板の前に立った彼女こそは、俺が手にした物語の中にいたはずの「トキコ」だった。不器用に近づいていく二人の距離。物語の中にいる「トキコ」と、目の前にいる「柊時子」のあいだで、奇妙に絡まってゆく想い。出会うはずがなかった読者と主人公の物語。その結末にあるものは――。
上記が公式のあらすじです。
過去の出来事が原因で他人との関りを持たなかった晃の手には、いつも一冊の本がありました。「十四歳」というタイトルの小説。その物語、いや主人公トキコだけが、晃の心の支えでした。
高校に入学した晃は、同じクラスの柊時子と出会います。目の前の柊時子は名前だけでなく、「十四歳」の主人公トキコそのままのイメージでした。それもその筈、彼女は作者の柊ところの実妹で、小説「十四歳」のモデルだったのです。
時子に惹かれていく晃ですが、それは現実の時子なのか、それとも物語の主人公トキコへの想いなのか?という葛藤が生まれます。同時に物語が進み、時子との距離が近づくにつれて、時子とトキコが乖離していくことに晃は気づきます。
現実の時子は高校1年生になり、十五歳になっています。しかし物語の中にいるトキコは十四歳のままなのです。
トキコという存在を、晃も時子もどう受けて止めていくのか?時子の想いは、作中の次回作「十五歳」で明らかになっていきます。
若干というか、相当ネタバレ感のあるレビューですが、結末は皆さんで確認してください。