ハウツー本を出しなさいと知人に言われました。
何のハウツーだよって感じですけど。
彼女は大学の同級生で、今ではコンサルティング会社の社長をしています。ぼくが大学生の頃、非常に推してくれていて、あと一歩何らかのキセキが起これば本物になれると太鼓判を押してくれたのを覚えています。覚えていますがキセキなんてそう簡単に起きる筈もなく、ぼくは卒業後数年で、がむしゃらに走ったセーシュン芝居にケリをつけたのでした。
そんな夢を諦めて日和ったぼくをなじるのが10年以上趣味という女です。同じ学科だったのでこいつも目標はあった筈ですが、自分が諦めたことなど棚に上げて、とにもかくにもぼくの行動に文句をつけてきます。可愛さ余って憎さ百倍を地で行く女です。
ここ数年はぼくが日々更新するブログにケチをつけてきます。せっかく病気になったんだから、もっとさぁお涙ちょうだいの文章が書けないの?他人の不幸はとにかく魅力なの!家庭も健康も仕事も失ったとか、なろうと思ってもなれないのよ?もっと悲惨でもっと同情を買うテキスト書きなさいよ!絶対にカネになるから!と力説しています。
こちらとしては単なる言いがかりなのですが、本気か嘘か、彼女はそれをコンサルティングだと言い張るので始末に負えません。
そんな彼女が昨晩酔っ払って電話してきたのは、冒頭に書いた通り、Kindleでハウツー本を出せという思いつきを押しつけるためでした。
何のハウツー本だよ!とゲームの片手間に話を聞くと、オッサンもしくはオッサン予備軍の童貞に支持されるような、オタクのコミュ障の貧乏人でも若くて可愛い女の子にモテる方法を書け!とのことでした。
お前のようなゴミがどうしてモテるのか分からないが、彼女やらセフレやら、女が切れた試しがないだろ?その手練手管をロジカルかつ平易なテキストで書け!表紙はカネ払って萌え系のイラストを発注しろ!イニシャルコストがないなら、イラストを依頼するカネは出す!とスマホからも鼻息が伝わってくるようでした。
いや、もうそういう指南本は腐るほどあるからと断ろうとすると、何冊か読んだけどあんなの成功体験が含まれてない机上の空論だ!何の魅力もない!と一刀両断です。
成功体験と性交体験をかけたコピーをつけたら面白そうだなと思いつつも、最後はいつもの科学忍法「あ、ごめんスマホの電池もう切れるわ!」の術で通話を終えたのですが、確かにモテるための指南本は売れるかもしれません。
自分で言うと恐ろしく滑稽ですが、さほど男前でもなく、ましてや金持ちでも何かしら光るものもない割に、ぼくはモテました。というか幼稚園くらいからずっとモテてます(笑)ただそのモテ具合は、世の中の女性が押し寄せるようなモテモテ系ではなく、地味に静かに好意を寄せられる感じですけど。
しかし自分の行動をロジカルに整理できるとはとうてい思えませんし、そもそも手練手管がある訳でもないのです。
彼女の言いぐさでは「売る」のが目的っぽいですが、ある意味ピュア故に拗らせた情弱童貞を欺すような本は出したくありません。書くとしたらどういうスタンスにするのか。実践してモテてほしいのはもちろん、読み物としても面白くなければダメでしょう。
って、何書く気になってんだ?(笑)
これを試せばバツ2にはなれる!オッサンの、オッサンによる、オッサンのためのSEX読本。40歳からのヤリチン化計画!!
そんな本は出したくないです。