AERA dot.に装幀家・菊地信義氏のインタビュー記事が掲載されていた。まもなく公開されるドキュメンタリー映画「つつんで、ひらいて」に関連する記事だ。
菊地信義氏は俵万智の「サラダ記念日」などの装幀を手がけた方で、インタビュー内容は、アナログ手法に対する想いが込められていた。
5年前に亡くなったイラストレーターで作家でもある安西水丸氏の小説「70%の青空」にも、DTPなど存在しなかった頃の広告作りが詳細に描写されているのだが、菊地信義氏の装幀もまた、あの頃と同じ手法で作られているらしい。
インタビューは「僕は、紙の本は絶対に消えないと思いますよ」という言葉で締められている。確かに本の手触りなどは、電子書籍ではとうてい再現できない、アナログの美学だろう。
出版社系のニュースを見ると、電子書籍に対しては批判的なテキストを目にすることがある。曰く、紙以外は本ではないと言った具合だ。実際、漫画やラノベ以外の電子化には消極的な出版社もあるのかもしれない。
個人出版した場合、Kindleでは作家が手にする印税が、最大70%となる。通常の数%~10%程度の紙本印税とは、雲泥の差だ。鈴木みそ氏の「ナナのリテラシー」でも描かれていたが、作家がこぞって電子書籍に移行すると、出版社は立ちゆかなくなるのは目に見えている。その為の自衛手段が、電子書籍に懐疑的なフリをする姿勢なのだろう。
ただ先にも書いたように、電子書籍では絶対に再現できない、紙の本の良さがあるのは事実だ。紙の本と電子書籍を同じ土俵で闘わせたり、論じるのではなく、「書籍」でありながらも、それぞれは別物だという認識、棲み分けが必要な時期に来ているのかもしれない。