実用的な意味で電子書籍の利用法を考えた時、最初に浮かぶのがパンフレットやリーフレットの代用です。
会社勤めをしていた頃、グループ企業の印刷物すべてを管理していたのですが、飲食・医療福祉・教育・観光など、どの分野も紙のパンフレットやリーフレットを制作していました。
実際の印刷物ですから制作費は相当なものになりましたし、在庫管理の場所もかなりのスペースを必要としました。
電子書籍はこれらの問題をあっさりと解決します。
もちろんすべてを電子化するのは現実的ではありません。たとえば配布対象となる方が高齢の場合、スマホやタブレットの使用を前提とする電子書籍に限定するのはいささか無理があります。そこは紙と電子両方を用意して、対象ごとの対応が必要になるでしょう。
しかしそれを差し引いても、電子化で全体の印刷部数は軽減できます。むしろ電子化することで、常に携帯できるメリットが生まれます。
近年はスマホ画面の大型化が進んでいるので、1ページごとの情報量を最適化させれば、むしろデメリットは重箱の隅をつつくように探さなければ見つけられません。
ところで、企業における印刷物の電子化で、最も障害となるとは社内での理解不足ではないでしょうか?あくまで経験則なのですが、紙の印刷物が必要だ!と思い込んでいる方はかなりいます。とくに権限のある世代に顕著でしょう。また泥臭い話ですが、取引先の印刷会社、デザイン会社とのしがらみから、電子化に消極的な場合もあります。
私が入社した頃、とあるグループ企業はB2サイズのポスター300枚に100万円くらい払っていて驚きました。たぶん110kぐらいの紙で、デザイン費込みですが、デザイナーとして贔屓目に見ても、テンプレートか!と突っ込むような内容でした。DTPを始めたばかりの学生でも作れそうなシロモノです。それをシーズン毎にポスター4種類、リーフレットとパンフレットそれぞれ2種類ずつで、毎回毎回1500万円くらい払っていました。
どう考えてもおかしな値段です。デザイン費込みでも1/8ほどが適正価格でしょう。我々親会社の人間が乗り込んで精査した結果、担当役員が印刷会社と組んで差額分を横領していたのが明るみになりました。
これはあくまで私の勤めていた企業の恥であり、極論ではありますが、多かれ少なかれ取引先との関係上、電子化に踏み切れない事情はあると思います。
電子書籍のパンフレットは、そういう身動きの取れなくなった企業ではなく、スタートアップ企業などに向いているでしょう。またよく言われるのがPDFではダメなのか、PDFとはどう違うのかという点です。
PDFでデザインしたパンフレットもMobiファイルで作った固定レイアウトも、見た目は同じです。同じですが、電子書籍は「ページをめくる」という感覚を残しています。これが意外と重要だったりします。PDFで作られたファイルは下にスクロールして次ページに移りますが、フィックス型ではタップやめくる動作で次のページに移動します。
この「めくる」という感覚が、電子書籍が「書籍」を名乗っている所以だと私は思っています。もしパンフレットを電子化しようと思っている企業は、PDFではなく固定レイアウトの電子書籍で作られてはどうでしょうか?めくるという行為は些細なことのようで、複数ページを読む場合には重要になってきます。
経費削減とオンラインですぐさま顧客に届く電子書籍のパンフレット、御社でもいかがですか?