電子書籍に動画を埋め込めたら、便利なんじゃない?とふと思いました。
たとえばグラビアの写真集で同じタイトルの動画を発売している場合にダイジェスト版を見せたり、レシピ本で作業過程を動画にしたり、図鑑やゲーム攻略本など、文章や静止画では伝えにくい部分に用いるなど、用途はかなりあるように思えます。
実際、Kindle本には動画を埋め込むことが可能です。MP4やMPEG-2 video fileを埋め込んだ電子書籍を制作できます。作り方もさほど煩雑ではなく、HTML5タグを加えるだけです。動画埋め込みに関する詳しいコードも、Kindleのユーザーガイドに記されています。
またFireタブレットをはじめ、iPad、iPhone、iPod Touchなどの端末も動画埋め込み電子書籍に対応しています(Kindle E-readerでは動画は再生されません)
しかし動画を埋め込んだKindle本は今のところ発売されてはいません。Kindleで出版するためのKindleダイレクト・パブリッシングが、動画の埋め込みをサポートしていないのです。
おそらくファイルサイズと権利関係が問題なのでしょう。Kindle本はダウンロードしてから閲覧する仕様です。要するに一度端末に保存すれば、ネット環境がなくても本を読める仕組みです。したがって動画も他のサーバーからリンクさせてストリーミング再生するのではなく、ファイルそのものに埋め込むことになります。当然このスタイルではファイルサイズは相当なものになります。
権利関係にしても、最近は少なめですが、Kindleの審査は著作権を無視した海賊版(発見した限り、雑誌からパクった画像で作った写真集がありました)を平気で出版させるようなザル具合なので、動画まで対象を広げると、法務的に対応できないのでしょう。
技術は完成し、それを再生する端末やアプリもあるのに、動画埋め込み電子書籍が出ないのは、この辺りが理由だと推測できます。
さらに動画を埋め込むのであれば、電子「書籍」である必要がないという根本的な問題もあります。それならWEBサイトで良いのじゃないか?ということです。
動画が埋め込まれたサイトは、今では当たり前のように存在します。電子書籍に動画を埋め込むということは、従来の「書籍」としてのアイデンティティを失うか、新しい概念を生み出すことになるのでしょう。
今後、動画と電子書籍の関係がどのように変化していくのかが楽しみです。