そうだ、電子書籍を売りに行こう。電子書籍の行商に出よう。そう思いました。
今になって思えば、どういう思考回路で行商なんて発想が生まれたのか、自分自身にお尋ねしたい。お尋ねというか詰問?オンラインで売ってるモノをオフラインで売りに行くの?
働きたくないという純粋な気持ちで、上場企業の敏腕サラリーマンから「夢織」という名の無職生活にクラスチェンジしたぼくですが、さすがに千日以上無収入では、蓄えも尽きてきます。蓄えが尽きるというのは、イコール命が尽きるという意味です。百円でも千円でも稼がないと!いよいよ人生背水の陣です。
そういう訳でもう後がなくなった三月某日、Amazonさんの販売ページをQRコードにしてプリントアウトし、見本誌が入ったiPadを持って行商の旅に出ました。
もちろんぼくだってダテに社会人生活を送っていた訳ではありません。基本的にオフィス内で着席し放しのデスクワークだったので、飛び込みの営業が来た時の鬱陶しさは理解しています。ぼくの勤務していた会社の受付はテロリストでも平気で入れてしまうレベルのザル具合で、飛び込み営業も普通に部署まで来てたんですよね。
仕事を中断させる、しかもまったく興味のない営業とか、迷惑以外の何者でもありません。迷惑をかけちゃ取れる契約も取れないのです。さりとてアポを取るような愚直さも持ち合わせてはいないという詰み具合。
しかしぼくはクレバーなので、知り合いがやってる小さな会社を狙い撃ちして、荒稼ぎする方法を思いついたのでした。
大阪市内に何社か知り合いがやっているオフィスがあります。元々同じ会社で働いていたのですが、ある時期に発生した社内クーデターの負け組とか、生き残ったけど嫌気がさして出て行った連中が興した会社です。そこに遊びに来た体で突撃しました。
一社目、従業員4名の零細企業に、手土産の缶コーヒー4本持ってお邪魔です。懐かしい面々は警戒もせずに迎えてくれたので、これ幸いと演劇部仕込みの演出を加えて大袈裟に窮状を訴えて、OSAKA candid全18巻の売りつけに成功しました。
しかしご存知の通りOSAKA candidは煩悩価格の108円。一冊売れてぼくに入るのは34円です。34円×18冊で612円、それが四人分で2448円。交通費とコーヒー代を引くと1500円ちょいです。これじゃダメだ。全然ダメだです。ダメだで過ぎる。手間の割には儲けが少なすぎてガッカリでした。
二社目、ここは多少大所帯です。仲間と形容しても良い連中が7名と大学生バイトが4人もいました。前回の反省を踏まえて、まず手土産は500円で買えたプチシューにしました。缶コーヒー人数分よりは安い!
ここでも惨めさを前面に出し、さらにカメラマンとして夢を追いたいんだ!お前らの協力が必要なんだ!と、ヤングジャンプみたいなパッションを発揮して、学生バイト含めた全員をこのサイト経由でKindle Unlimitedに入会させました。その上でOSAKA candid以外の本を5~6冊購入してもらい、OSAKA candidをアンリミテッドでレンタルさせました。助けるとおもって、OSAKA candidはすべてページをめくってくれ!という哀願込みです。
アンリミテッド入会でアフィリエイトが500円×11人で5500円。もし本当に全員がOSAKA candidを最後までめくってくれたとしたら平均400ページと仮定して、400ページ×18冊×0.5の11名分で39600円。さらに買って貰った書籍の利益が240円。それを5冊分11人で13200円。ということは合計52800円。一社目と合わせて約55000円の儲けです。
これは美味しい。オイシイけど、一回こっきりしか使えない手です。友だちのいないぼくには、二発目三発目は不可能。これでは暮らしてはいけそうにはありません。
それはそれとして今回実感したのは、Amazonさんのネームバリューと普及率の高さでした。15名全員がアカウントを持っていましたし、Amazonのサービスだと言えば特に訝ることなくKindle Unlimitedも申し込んでくれました。
買って貰った後に談笑してたら、バイトの大学生に「出向いて営業して現金取引するなら、自分のサーバにデータを置いて売れば良いんじゃないんですか?手数料も取られないでしょ?」と言われました。阪大の学生です。さすが大阪大学。大阪芸術大学には思いつかないことが、あっさり浮かぶんですね。
そしてあれから一週間ほど経過した本日ですが、まだ全員が本をレンタルしてくれていないことも判明しております。無念。