本日ご紹介するのは「神童と猛獣」加藤マユミ著です。
神童と呼ばれ、周りから浮いている佐野健一は、猛獣と呼ばれ、周りからからかわれている鈴木エリナと出会う。
他に友達がおらず孤独だった二人は急速に仲良くなっていく。
しかしそれぞれの家庭には複雑な事情があり、二人の親もそれぞれ悩んでいた。
この二人の出会いにより両家族はどう変化していくのか…!?
小学4年生の健一とエリナがふとしたきっかけで親しくなり、その後、様々な問題に直面しながら中学高校と成長していく物語です。
面白い、面白いのですが、何という大団円!? 都合良くねぇか、良すぎねぇかと思うぼくは心が汚れているのでしょうか?デウス・エクス・マキナ的に「何か」に導かれて、最後は全員ハッピーエンドです。ハッピーなエンドが確かに素敵なのは分かります。物語的に無理も破綻もしていません。しかしこのモヤモヤする読後感。
「全員悪人」ってコピーの映画がありましたが、本作は「全員善人」なのです。ネグレクトしそうなエリナの母も、サイコパスになりそうな健一の父も、健一に横恋慕する姫香もその母も、普通なら悪人になりそうなキャストが全員良い奴なんですよ!
健一とエリナの家庭の事情も、当事者にとってはそれなりにヘヴィかもしれませんが、三度食事が出来て住む場所もあって、その上での悩みというか、「パンがなければ、ケーキを食べればいいじゃない」というマリーアントワネット的な浮き世離れしたイメージが払拭できないのです。
とはいえ、全員善人という物語は、決して悪くはありません。健一とその家族、エリナと母、みんながいい人だったからこそ、物語は進んでいくのです。これ誰かが悪人になったら、一気に三文芝居感が出てきたことでしょう。
いじめに復讐するスカっと系とか、異世界転生モノとか、無条件にギャルがオタクを好きになるような話に食傷気味の方には、特に本作をオススメします。
世の中ってまだまだ捨てたもんじゃないなと思える読後感です。もっとも、こういう世界が当たり前ではないから、物語になるんでしょうけれど。
全14巻のうち11巻までがアンリミテッド対応で、無料レンタルできます。たぶん11巻まで読んだ方は、残りの3冊も購入してしまうでしょう(笑)そんな魅力を持った作品です。
あとスピンオフ作品である「神童と猛獣 ラブラブ編」を見ると、ちょっと印象変わるかもです(笑)おい健一!お前やることやってんなぁ!って(笑)こちらも併せてオススメします。