キミの忘れかたを教えて1
著者:あまさきみりと イラスト:フライ
今回はほんの少しだけ主人公の年齢が高い作品です。
ラノベって高校生がメインキャラってイメージがあるんですけど、この作品の主人公は二十歳の大学中退ニートです。
俺は死にゆく身、なのにキミは何度もそれを許さない――青春感動巨編、開幕
「残された余命は半年――、俺はこのまま死ぬつもりだった」大学を中退してニートとなり、生きる価値がないと感じていた松本修は、昔からの悪友・トミさんの誘いで母校の中学校を訪れる。
そこには芸能人となってしまった因縁の幼馴染み・桐山鞘音がいて……。この出会いが再び修の運命を突き動かす。『天才ゆえの孤独を抱えたヒロイン、凡才ゆえに苦悩する主人公。二人のすれ違いと、遠回りな青春に引き込まれました』
『逃げて逃げて、逃げ続けたクズに残った一つの約束。胸が熱くなりました』 発売前から感動の声多数。掴めなかったチャンス、一度何かを諦めてしまった人に贈る、大人の青春物語。
以上が公式のあらすじです。
ともすれば否定的な要素になる田舎の人間関係が、ストーリーを動かしていきます。旅名川という、どうやら東北地方らしい架空の田舎町の放つ空気が、不器用な主人公とヒロインの関係を優しく包んでいる物語です。
小さな田舎町と、そこに住む人たちの、小さな小さな人間関係だけで作品は成立しています。
才能溢れるヒロインと自分とを比較して、勝手に夢を諦めた主人公と、それを許せなかったヒロインが、果たせなかった約束に向かって歩み寄る姿は、大学生にしては青臭く、確かに青春物語と形容しても、差し支えない出来映えといえるでしょう。
芸能人となっても汚れてないヒロインや、中学生で時が止まったような主人公のピュアなやりとりは、疲れた大人の清涼剤になる筈です。
ただ一点、物足りない箇所としては、物語の根幹を成す筈の主人公の病気、余命宣告がされているという設定が、ほぼ活かされていないことでしょうか?
一度救急車で運ばれる以外、あまりに健康なのです。悲壮感を出さないための演出といえばそれまでですが、この点だけが、物語を違う意味で軽くしているのが残念でなりません。
続編もあるのですが、再読していないので、今回は1巻のみの紹介です。