今回ご紹介するのは「女の穴」ふみふみこ著です。
タイトルがアレですが、この穴は「目」のことです。短編連作(連作なのかしら?)的な本作品の最初に描かれている「女の穴」で、主人公の高校教師は福田は、3年生で教え子の鈴木の目を「ぽっかり空いた穴みたいで、なんかこわい」と思っていました。
ひょんなことから鈴木に「私と子供をつくってくれませんか」と持ちかけられた福田は、何の考えもなく鈴木を抱いてしまいます。何回かの性交で鈴木は妊娠し「目的は達成しました」と、福田の元から去ります。
卒業式で「生まれたら知らせて、頼むよ」と告げる福田に、振り向きもせずに「わかりました」と応えた数ヶ月後、鈴木は福田を呼び出します。そこには赤ん坊を抱いた鈴木が立っていて、その目はもう「穴」のようではありませんでした。
鈴木の目は、何のメタファーだったのか読後考える作品です。なぜ穴のような目だったのか。それがふさがった理由は何なのか。出産に関係しているのか。それとも(ネタバレになるので言えませんが)彼女の正体、境遇に関係しているのでしょうか。
深くは語れませんが、鈴木の目は「装置」だったのではないかと、ぼくは考察しています。何ための装置なのか、彼女が意図して装備したものなのか否かは分かりませんが。
本書は4作品が掲載されています。その中でも完全に連作となっている「女の豚」と「女の鬼」が一番琴線に触れました。SFなのかホラーなのか定義することすら無意味な気がする、奥の深い良作です。ぜひ手にとって、あなたの答えを見つけてください。