今回ご紹介するのは「伊藤潤二傑作集(1)富江」です。
川上富江は、長い黒髪、妖しげな目つき、左目の泣きぼくろが印象的な、絶世の美貌を持った少女。性格は傲慢で身勝手、自身の美貌を鼻にかけ、言い寄る男たちを女王様気取りで下僕のようにあしらう。だが、その魔性とも言える魅力を目にした男たちは皆、魅せられてゆく。
やがて、富江に恋する男たちは例外無く彼女に異常な殺意を抱き始める。ある者は富江を他の男に渡さず自分が独占したいため、ある者は富江の高慢な性格に挑発され、ある者は富江の存在の恐怖に駆られ、彼女を殺害する。
しかし、富江は死なない。何度殺害されても甦る。身体をバラバラに切り刻もうものなら、その肉片1つ1つが再生し、それぞれ死亡前と同じ風貌と人格を備えた別々の富江となる。たとえ細胞の1個からでも、血液の1滴からでも甦り、富江は無数に増殖してゆく。そして、その富江たちがそれぞれ、男たちの心を狂わせてゆく。
これは、そんな魔の美少女・富江と彼女に関わることによって人生を誤る男たち、そして彼らを取り巻く人々の人間模様を描いた物語である。
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この作品、過去に何度も映画化されているので、ご存知の方も多いのではないでしょうか?歴代の富江役は皆さん美人ばかりです。
富江は、外見的には美しい女性ですが、彼女の魅力は異常なもので、彼女を愛した男性たちは次第に彼女に取りつかれ、狂気に陥ります。さらに富江は死んでも復活する力を持っており、彼女を殺そうとする人々も彼女の不死身の力に苦しむことが描かれています。このキャラクターは恐怖と美しさの対照を強調し、伊藤潤二の作風を象徴するものとなっています。
しかし実際に不死身であったり、増殖する存在であれば文字通りホラーなのですが、それ以外の部分では富江に近い存在の女性は実在するように思います。その美貌や言動で男を狂わせてしまう女性です。
そういう女性をデフォルメして生まれたのが富江なのではないかと少し考えました。楳図賞を目指して描かれただけあって、楳図かずおテイストな絵柄ですが、見た目の恐怖は少なめです。グロテスクな表現以上に、物語として描かれる、得体の知れない富江という存在、そして何よりその美しさに人は怖さを覚えるような気がします。
それは男女によって、感じ方は違うような気もしています。男性にとってはむしろその美しさに畏怖の念を抱くのではないでしょうか?化け物だと分かっていても、虜になりたいような魅力を持ったのが、富江なのです。