この作品が出版された時、物語は現状から未来に向かう話でしたが、今読むと、もう過去の記録でした。
電子書籍の未来がここに!
職場体験のため怪しげな事務所の門を叩いた女子高生・許斐七海。
突然目に飛び込んだ半裸の「天才ITコンサルタント」のもと、彼女は新時代のビジネスの真髄を知る!『限界集落(ギリギリ)温泉』電子版をAmazonのKindleで個人出版し、空前の大ヒット!
電子書籍業界の最重要パーソンとなった著者最新作。第1弾は自身の経験をもとにした電書編!!
今から約4年前に出た作品です。
どうしてこの作品を、もっと早く読まなかったのか。読後の感想は、まずそれでした。
自分がKindleで出版すると決めた後で、初めて手にしました。それもKindleで。先行者利益の典型的な例を、惜しげもなく開示してくれています。ファミ通世代の我々には馴染み深い作家です。あの頃、「あんたっちゃぶる」や「おとなのしくみ」を楽しみにしていました。それだけに、ルポマンガが主流で、ストーリーマンガを描く方ではないという認識があったのです。だからスルーしていました。でもこれはこれで、ルポマンガだったのです。
電子出版は出版社を救わない。電子出版が救うのは、登場する鈴木みそ吉のような、マイナーだがある程度知名度があり、「カルトな作家」たちだと、天才コンサルタントの仁五郎は言います。個人出版した前作「限界集落(ギリギリ)温泉」は、Kindleで空前のヒット作となりました。あのヒットの裏側を、客観的にルポルタージュしているのが、本作なのです。
今となっては(たった4年ですが!)古くなった製作方法なども、克明に描かれています。当時の鈴木みそ氏の苦労は、Kindle Comic Creatorが無料でほぼ解決してくれました。
この作品で重要なのは、いかにして生きていくかということです。
残念ながら、多くの人は遊んで暮らせません。自力で生きていく糧を得るしかないのです。それはフリーランスのクリエイターに限ったことではありません。サラリーマンだって、いつリストラされるか分からない時代なのです。
こういう時代に必要なのは、知恵と決断力なのでしょう。知恵は仁五郎や七海が提示する訳ですが、決断をするのは、鈴木みそ吉なのです。その決断が、彼を電子出版界の寵児へと成長させます。
これからKindleで作品を出そうと思っている方に、ぜひ読んで欲しい一冊です。Kindle Unlimitedでも読めますので。