今回ご紹介するのは記伊孝著「アニウッド大通り」です。
第1巻の内容紹介: 宮崎駿、富野由悠季ら、そうそうたる綺羅星が活躍した80年代のアニメ業界。
新進気鋭のアニメ監督であるお父ちゃんに影響を受けながら、成長していく子供たち「オタク版 三丁目の夕日」開幕です。13年の2月から某漫画投稿サイトにて連載開始をした話題作。マニアックなアニメネタ、80年代カルチャーてんこ盛りのほのぼの漫画です。14年にKDPコミックから初の書籍化が決定。2015年「このWEB漫画がスゴイ」にて紹介されました。
あとがきには、作者が、宮崎駿監督の元で演出を勉強した 「東小金井村塾物語 巨匠と過ごした夏」もたっぷり加筆! ほかにも未発表4コマもたくさん収録されています。 全142p
この作品は、アニメ監督である父ちゃんと、看護師の母ちゃん、小学生の樹貴、妹の園ちゃんの四人家族が繰り広げる「家族とお父ちゃんの…創作(ゆめ)にまつわる物語」です。
ストーリーは父ちゃんの仕事と樹貴の創作(そして男子小学生丸出しライフ)が絡み合って進んでいきます。
技術と才能はあるものの世渡りが上手くない父ちゃんの孤独な闘い、父ちゃんに協力する同期の仲間たちとの絆、そういうシリアスな展開と、お互いに意識はしているけれど、その感情が恋なのかまだ分からない樹貴とクラスメイトのサネヨシさんの同人誌作り、そして少しずつ成長してく子どもとそれを見守る大人たちのエピソードが、心地よく絡み合っています。
作中に描かれるチェルノブイリ原発事故は1986年なので、この作品はその年の物語です。ドラゴンクエストの発売や電電公社の民営化など、当時の出来事もかなり登場して80年代というまだこの国に活気があった頃を追体験できるのも魅力でしょう。
現在13巻まで発売されていている本作が、どのような結末を迎えるのかは分からないのですが、これは父ちゃんと樹貴という二人のクリエイターが、それぞれの戦場で戦う話だといえます。また父ちゃんの同期たち、父ちゃんの門下生である二人の女子高生たちも、創作活動というカルマの中で苦しみながらも前を向き続けます。モノを生み出す人間すべてに共通する希望や挫折や葛藤を、緻密な画風ながらほのぼのとしたタッチで描いた良作です。
あとがきの「東小金井村塾物語 巨匠と過ごした夏」も作者のバックグラウンドが分かる、あとがきと呼ぶには充実した作品になっています。東日本大震災の不安の中で、kindleによって活路を見出した姿は、電子書籍に携わる者としては非常に感慨深い内容になっています。
既刊13巻、すべてアンリミテッド対応で無料レンタルが可能です。読後に希望を感じられる名作、早く14巻を読みたいです!余談ですが、母ちゃんとサネヨシさんがめちゃくちゃ可愛いです。