ここは電子書籍を紹介したり作ったりするサイトなのですが、Mamegohan Digital Publishingは紙の本を否定している訳ではございません。むしろ紙の本というかリアルな印刷物は、構成員一同、大好物だったりします。
ただ最近はジェネレーションというのか、特にマンガを読んでいるヤングに顕著なのですが、電子書籍が優れていて、紙の本は時代遅れだという意見をリアルに聞きました。その発言をしたのは十代後半から三十代前半の男性だったのですが、たまたま我々の周囲にこういう感覚の人間が集まったのか、それとも世間一般のコンセンサスなのか、少し気になりました。
読者という視点から見れば、電子書籍のメリットは非常に多いです。個人的に最もそれを感じられるのは、欲しいと思ったその時に本を購入できることでしょうか?電波さえ繋がっていれば、時間も場所も問いません。
あと保管場所を取らないことですね。入院とか帰省時に、大好きなコミックやラノベを全巻持って行くのですが、紙の本だとそれは不可能に近いですよね。入院するのに物語シリーズ30巻を持ち込んだら、え、何しに来たんですか!?って看護師に呆れられます。
その点、電子書籍はストレージが許す限り、ガジェットにいくらでも入ります。
しかし紙の本にも紙の本だからこその利点があります。まずすぐに目当てのページにアクセスできる点です。電子書籍だってできるだろ?と突っ込まれそうですが、ゲームの攻略本(特にネットに出てない詳細情報が掲載されているギャルゲーの攻略本)などは、プレイしながら必要なページをすぐに開けます(伝わるか?)もし電子書籍を読んでいるタブレットでゲームをプレイしている場合は、アプリを切り替えるという手間も生まれます。
次に情報量が多い攻略本の類いは、大判で出版されていることが多く、大画面のタブレットで見たとしても、電子書籍より見やすいとも感じます。また俳句集を出しているMahitoX氏が言うには、季語を網羅した「歳時記」を実際に使用する時は、電子書籍よりも紙の本の方が使いやすいそうです。目当ての季語を検索するスピードと使い勝手は、紙の本にはかなわないとのことでした。
あくまで個人的な意見なのですが、紙の本と電子書籍を分けて考える必要ってないように思います。どちらも同じ書籍なのです。これは紙の本が良い、紙の本で所持したいと思えばそちらを選び、電子書籍の方がいいやと思えばそちらをチョイスすれば良いのです。どちらにもメリットはあり、デメリットがあるのですから。
また作り手としては、紙の本と電子書籍では根本的な技術が違う点が、非常に興味深く感じられます。どちらもAdobeのPhotoshopやIllustrator、InDesignといった共通のソフトを使用します。ただ紙の本はDTPデザインでありカラーはCMYKで作られます。これに対し電子書籍はRGBカラーで作られ、どちらかといえばWEBデザインに似た感覚だと言えます。
要するに紙の本の技術だけで電子書籍は作れませんし、電子書籍の技術だけでは紙の本は作れないのです。同じソフトを使っているのに、これは非常に面白い点です。この場合も紙の本、電子書籍と分けるのではなく、どちらも作れるようになれば、より幅広い技術が身につく訳で、どちらの技術が優れているという話ではないのです。
そういう訳で、紙の本VS電子書籍のような安易な対抗構図にならないことを願ってやみません。