電子書籍関連ニュースサイトの「Good E Reader」によれば、数年来続いていたアメリカ国内での電子書籍販売数低下に、改善の兆しが見られたそうだ。
September was a great month for audiobooks, ebooks and print sales(原文)
要約すると、電子書籍に限らず、この9月は書籍関係の売り上げが好調だったようだ。
電子書籍大国、電子書籍先進国と個人的に思っていたアメリカでも、シェアとしては圧倒的に紙媒体が強い。それに追随しているのが、電子書籍ではなくオーディオブックだという。
日常的に欧米からの観光客が多く乗る電車を利用していると、彼らの多くが車内でKindleを手にしていることに気づく。一昔前はペーパーバックを手にするのが当たり前の光景だった筈なのに、kindleユーザーのあまりの多さに、もう欧米では紙の本は廃れてしまったのだと思い込んでいたので、この結果は興味深い。
日本の場合、徐々にではあるが確実に出版業界は衰退している。公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所の発表によれば、2018年の出版市場規模は紙+電子で3.2%減の1兆5,400億円、紙は5.7%減、電子は11.9%増とのこと。つまりアメリカと違って、衰退しつつある出版業界にあって、電子書籍の占める割合は増えていることになる。
おそらく成熟したアメリカの電子書籍業界と、まだ成長期、過渡期の日本のそれとの違いが、日米で「差」が生まれた原因だろう。
2018年度の電子書籍売り上げでは、「コミック」は2387億円(前年度比29.4%増)、「文字もの等(文芸・実用書・写真集など)」は439億円(同10.9%増)となっている。「コミック」は電子書籍市場の84.5%、電子出版市場の76.5%を占めている。
漫画家の鈴木みそ氏が「ナナのリテラシー」で描いたように、漫画家にとって電子書籍が魅力的な点は、この割合からも分かる。アマゾンも漫画家用にコミッククリエイターや無料漫画出版などで、ソフト・ハード両面からバックアップしている。
電子書籍がマンガのためだけの存在になるのか、またアメリカの好調が今後も続くのかも注視したい。アメリカが再び電子出版不況に陥るなら、それは数年後の日本の姿だからだ。
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